海の向こうで新たな一歩を
不登校からの留学
私たちのところには、日本での学校生活や人間関係につまずき、海外に新たな活路を見出したいとご相談に来られるご家族が毎年複数おられます。留学先で数々の苦労を乗り越えて高校卒業や大学進学を果たした生徒もいれば、志半ばで途中帰国に至った生徒もいて、一歩を踏み出した先のあり方は千差万別です。共通していえるのは、留学すれば安泰というものではないということです。
留学を検討する上で、子どもの《心の土壌》が留学生活を送るのに十分に整っているかをよく見極めることが先ずは肝要と私たちは考えます。ここでいう《心の土壌》とは以下のような点を指します。
- 心身ともに健康である
- 規則正しい生活習慣を送れる
- 学習意欲を持ち学習習慣がある
- 異なる文化や習慣を受け容れる柔軟性がある
- セルフマネジメントができる
留学は、言葉や文化的価値観、学校生活から生活習慣まで日本のそれとは全く異なります。日常生活においては、小中高生でも「自分のことは自分で」が基本です。西洋の国々の子育てのゴールは、子どもが一人で生きていけるように幼少期から自立させていくことに重きを置いているため、家事手伝いも年齢相応にやることが当たり前であったり、自室での寝起き、時間管理等も自ら行うことが求められます。
コミュニケーションにおいては、日本のように察する文化ではないため、学校でも寮でもホームステイでも、他人との共同生活においては「伝え合う」双方向のコミュニケーションが望まれます。そのようなコミュニケーションの上に信頼関係が築かれるからです。ここに挙げたようなことが十分とは言えないまま海を渡ったケースもゼロではありませんが、環境の変化が良い方向に転じることもあれば、現地で何らかの課題に直面し、解決や解消に至らぬまま途中帰国を余儀なくされたケースも実際にあります。仮に志半ばで帰国されたとして、そこまでの経験は決して失敗や無駄と捉える必要はありません。変化の多い環境下において揉まれる中、自分なりに試行錯誤され、その時はうまくいかなかったと思っても、時を経てその経験をも何かしらの学びや糧になっていることもございます。
本来子どもは、どんな状態にありながらも成長したい気持ちを持っています。心の土壌が整い、適した環境に身をおくことで可能性を育みながら成長していくことができます。家族や友達と離れて生活することは、子どもから大人へと成長するうえで「自立」や「自律」の訓練を積む機会でもあります。どんな大人になりたいか、子どもにどんな大人になってほしいか思い描いた姿から逆算して、ここからの一歩に相応しい選択をご家族でもよくよく話し合われてください。
これまでの事例
S・Nさん 留学先:ニュージーランド 学校:Glendowie College
高校では学級委員として皆を引っ張り、周囲に頼られる存在だったがその役に疲れを感じ、学校を休み気味に。家族で話し合った結果、海外の学校に通うのも選択肢のひとつと考え、駄目なら帰ってくればいいとの思いで、高校1年の途中から留学生活をスタート。当初の心配をよそにすんなり現地生活にも馴染み、自然体で過ごした3年間の留学生活後、日本の大学に帰国子女受験で進学。
S・R君 留学先:ニュージーランド 学校:Howick College
いじめが原因で不登校気味に。親御様が留学経験者で海外への理解があり、のんびりした彼の性格を考慮し、ニュージーランドののびのびした環境で中学3年より留学をスタート。高校課程修了後、ニュージーランドの大学に進学。
I・Hさん 留学先:ニュージーランド 学校:Darfield High School
中学3年時のいじめがキッカケで不登校に。ご家族が海外に精通していることもあり、高校からの進路の選択肢として海外に目が向いた。卒業までの3年間、一つのホストファミリー宅で家族のような関係を築き、よくお手伝いもされ、のどかな田舎生活を満喫。帰国子女受験で日本の大学に進学。日本開催の留学フェア等では母校のブースで学校紹介を手伝うことも。
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N・Sさん 留学先:イギリス 学校:Buckswood School
私立中高一貫校に通っていたNさんは、詰め込み式の教育に疑問を感じる日々を送りながら、最終的には日本の教育システムに嫌気がさし不登校に。海外の自由な校風、学びたい事を自分で選択していけるのであればと、まずは1年という期限を決めスタート。イギリスの学校環境や学習スタイルが彼女には適していたようで、高校卒業を果たしそのままイギリス国内で大学に進学。
I・Tさん 留学先:カナダ 学校:ゴールデンヒルズ学区
中学のクラスメイトとうまくが持てず不登校に。親御様の応援もあり、中学2年の夏に、以前サマースクールに参加したカナダに留学する事を決心。当初は環境の違いに戸惑いを覚えたこともありながらも、自ら行動しないと何も変わらない事に気づき、積極的に友達とかかわるように。3年間の留学を経て日本の高校に編入。
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途中帰国となった事例
N君(高2)
日本の高校に進学したものの合わずに中退、オセアニアの公立校に一学年落として進学。順調なスタートを切ったものの慣れた頃に学校をさぼり出し、たびたびの警告を受けても改善されず退学。
O君(中2)
中学受験で第一志望校には進学できず留学に踏み切った。1年目は順調に過ごしたがホリデーでの一時帰国から戻った後は学校を休みがちに。学生ビザを維持できず留学2年目の途中で帰国。
Kさん(高3)
北米のボーディングスクールに留学中、最終学年ということもあって勉強が大変になり、卒業できるか不安とプレッシャーで体調を崩して途中帰国。
不登校からの留学 Q&A
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不登校期間があるお子様が留学されたケースは複数ございますが、不登校となられた理由、不登校の期間やその間の過ごし方、留学に対する意欲や目的等によって留学先の受入可否は変わります。先ずは現在までの状況をお聞かせ頂き、留学における可能性を共に考えましょう。
学校によっては制服がなく、選択科目も豊富にあり、教室内のレイアウトも日本のように整然としている訳ではないため、自由な校風に見えるところは実際にあります。他方で学校や寮、ホームステイ先にはそれぞれ規則があり、それらに従って生活することが特に留学生(学生ビザでその国に滞在)という立場を維持する上でも大切です。規則を破れば、事によっては停学や退学処分が下されることもあります。留学生活においては自由な環境である分、一つ一つの言動や行動にお子様自身が責任を持つことが求められます。
弊社ではこれまでに軽度発達障害のお子様の留学サポート実績はありますが、一人ひとりの特性や留学先で必要な支援は異なりますので、この学校なら確実に入学できるという訳ではございません。留学の可否を判断するためにもまずはお子様の状況を包み隠さず教えて頂くことが肝要と考えております。受入候補先の学校も必要なサポートをお子様に提供できるか否かを判断する上で、お持ちの情報をできる限り多く共有頂けることを望んでおりますので、まずはお子様の状況をお聞かせください。
既往症や通院中の疾患がある場合、留学可否を私どもや受入先が判断させて頂く上で、主治医やカウンセラーから英文の診断書と処方箋、渡航許可書をお取り寄せ頂くことがございます。お子様自身が心身健康な状態で留学に臨まれることが有意義な経験につながりますのでご協力をお願いしております。
これまでにお手伝いさせて頂いた学生の事例では、日本の義務教育期間中であれば、地元の公立校に復学できるケースが多いです。高校生で途中帰国された事例では、私立校や都道府県の編入試験を受験されたり、インターナショナルスクールに編入された事例はあります。近年では通信制の学校に編入するケースも増えています。復学や編入可否、又、何年生に入れるかは各学校や教育委員会の判断となりますので、各学校や教育委員会にお問い合せ頂くようご案内しております。
不登校期間の有無にかかわらず、英語が母国語でない時点で1学年下げての入学であったり、同じ学年をリピートすることは、留学においてはめずらしことではありません。自国の生徒でも、保護者や教師がその子にとって学年を下げたりリピートすることが適切と判断した場合は、そのように対応することが一般的な国もあります。
不登校からの留学をご検討頂く上での留意点
- 留学先が見つかるかどうかはケースバイケース
本人の意志や意欲+不登校期間、欠席期間中の過ごし方、学年・年齢、語学力、既往歴の有無等によって、留学先が見つかる可能性は変わります。 - 受入先の国や学校は限定される可能性大
学生の本業は学びを継続していることであるといった根本的な考えは、欧米のいずれの教育機関も共通して持っています。不登校期間がある場合、不登校の理由やその間の過ごし方等は、問い合わせの段階から訊かれます。学校以外で学びを継続されている場合は、第三者からの評価書や推薦状(英文)を求められることもあります。 - 留学がうまくいくケースもあればそうでないケースもある
環境が変わりのびのびと留学生活を送っている子どももいれば、留学先でも生活リズムを崩したり、友達やホストファミリーと良好な関係を築けず自主退学に至ったケースもゼロではありません。新たな環境に適応するには、殻を破り、自ら行動を起こすことが求められることを十分理解した上で留学に臨まれることが望ましいです。 - 既往歴がある場合は医師による留学承諾書が必要
留学は環境の変化が大きく、良い方に作用することもあれば、メンタル面での落ち込みや引きこもり等も起こり得ます。既往歴がおありの場合は、主治医よる留学承諾書(英文)の取り付けが必須となる点をご了承ください。 - 発達障害(グレーゾーン含む)の場合は発達検査結果が必要
発達検査結果(英文)は、受入機関で必要なサポートの提供可否を判断する上で、問い合わせの段階で提出を求められることが多いです。
(株)海外教育研究所は小中高生専門の留学支援会社です。キャリアコンサルタントや心理カウンセラーの資格を保持するコンサルタントが在籍し、留学準備プログラムやかかわりを通じてお子様の内面を育むべく心理学の要素を含む内容を伝授しておりますが、当方は医療機関ではなく、留学に直接関連しない事案や医療機関等の紹介は行っておりませんので予めご了承ください。
留学は、目的やその先のゴールに加えてご家族やご本人の意思によっても方向性が異なります。
まずはお子様のこれまでの背景や、ここから望まれるものをお聞かせください。