「英語を話せるようになりたい」
その純粋な思いから、11歳でニュージーランドの公立小学校へ渡航した一人の小学生がいました。きっかけは短期の海外滞在。英語が思うように話せなかった悔しさが、「もっと学びたい」という強い気持ちへと変わりました。当初は1年間の予定でしたが、世界的な感染症拡大の影響により滞在は延長となり、結果として約1年半の海外生活を経験することになりました。
滞在はホームステイ。
広い庭や果樹のある家庭で、日本とは異なる生活リズムに最初は戸惑いながらも、温かな受け入れに支えられ、次第に安心できる居場所へと変わっていきました。学校では、歴史を劇で学ぶ授業や先住民文化に触れる時間、歌やダンス、スポーツ、ベイキングなど、体験型の学びが日常にありました。知識を覚えるだけでなく、五感を使って学ぶ毎日は新鮮で、多様な文化の中で過ごす時間そのものが学びとなっていきました。
すべてが順調だったわけではありません。
授業の英語は難しく、思うように発言できないもどかしさを感じる日々。最初は日本人の友達と過ごす時間が多く、安心感はあるものの、自分の世界が広がらないことへの葛藤もありました。「できない」「無理かもしれない」そんな言葉が増えた時期もありました。それでも、先生や友達の励ましに支えられながら、少しずつ前を向けるようになっていきます。
2年目に入る頃には、自ら多国籍の友達に話しかけ、休み時間には現地の子どもたちと自然に笑い合う姿が見られるようになりました。現地スタッフからは「常にポジティブ」、ESOL担当の先生からも「努力を惜しまない姿勢が素晴らしい」と評価されるまでに成長しました。特に大きな変化は、言葉の使い方でした。「不安だけどやってみる」「自信はないけれどベストを尽くす」と、自分の気持ちを前向きな表現に変えられるようになったのです。言葉が変わると、行動が変わる。行動が変わると、自信が育つ。異文化の中で育まれたのは、まさにマインドセットの変化でした。
ロックダウンにより学校がオンライン授業へ移行した時期もありましたが、ホストファミリーと過ごす時間はむしろ増え、家庭でのベイキングや季節行事を通して絆はより深まりました。オンラインで提出したショートムービーでは、楽しそうで前向きな姿が印象的だったと評価を受けました。制限のある環境の中でも前向きに取り組む姿勢は、語学力以上に価値ある成長でした。
送り出した保護者の胸には、当然ながら大きな不安がありました。「小学生が一人で海外に」という心配、ホームシックで涙する日、「帰りたい」と口にしたこともありました。それでも最後まで自分で立てた目標をやり抜いたとき、そこには出発時とは別人のように自信に満ちた表情がありました。英語力だけでなく、困難に向き合う力と自分を信じる心が育っていたのです。あのとき「行かせてよかった」と心から感じられたといいます。
海外教育研究所では、小学生の留学を語学習得だけの機会とは考えていません。異文化の中で揺れながら、自分の言葉を見つけ、自分を信じる力を育てていく時間だと思っています。うまくいく日も、立ち止まる日も、そのすべてが大切な学びです。
「まだ早いのでは」と迷う気持ちも自然なこと。けれど挑戦の先に、子どもが少し自分を好きになれる瞬間がある。その姿を、私たちはこれまで何度も見てきました。その瞬間に立ち会えることもまた、私たちの大きな喜びです。
金成
小学生の単身留学 〜その子らしい一歩を考える〜